だたら八つ・緊急号(WEB版)
東北、関東大震災に関連した八ヶ岳山麓(山梨県北杜市・長野県、佐久・諏訪地域)の地域情報
2011.3.19 げんごろう工房・田中 智   (リンクフリー)

−被災された方々へのお見舞いの言葉−

 
 想像を絶する地震と津波が東北地方の太平洋沿岸を襲いました。テレビ、ラジオで日々送られてくる被災された皆様の光景を見て涙があふれました。ささやかな支援しかできませんが、お見舞い申し上げます。

−だたら八つ・緊急号−

 大地震が発生して一週間が立ちます。自然災害のみならず、福島第一原子力発電所の事故が暗い影を落としています。普通ではあってはならない放射線が外部放出されています。すでに一時的ですが、関東地方で通常値より高い放射線が測定されました。山梨県甲府では幸いなことに通常値でしたが、長野市では一時的に通常値の2倍程度が観測されています。
 今後、八ヶ岳山麓にも放射性物質が飛来してくる可能性があります。その量や強さは未知ですが、ここでは、どのような気象条件の時に八ヶ岳山麓に飛来する可能性が強いのか考察、お伝えし、ご参考くださればと思います。

−八ヶ岳山麓にも放射性物質飛来の可能性−

 まずはズバリ回答から。説明は後に回します。
八ヶ岳山麓に飛来する可能性の強い天気状況は
「北東気流が流れ込む日」です。
天気図1.2のような気圧配置になった時に北東気流が流れ込みます。
地図の★印は八ヶ岳 ●は福島第一原発 →は風の向き

天気図1 天気図2

ポイント
@風は等圧線の方向に沿って吹きます。
(風は高気圧を中心に時計周りに吹きます。低気圧を中心に反時計周りに吹きます。)
A天気図3のように、等圧線が同じ方向でも、低気圧と高気圧の位置で風向きが逆になる場合もあります。この場合「八ヶ岳山麓では」飛来の問題はありません。
B等圧線の幅が狭いほど風の強さは強くなります。風の強さによって放射性物質の到達する距離も違ってきます。

天気図3

−放射性物質の飛来予測の可能性−

 この東北気流が入る天気図を覚えておくと、放射性物質の飛来予測ができる可能性があります。
@まず「天気図1.2」の形を理解して、覚えておいてください。 A「ウェザーニュース」という気象情報WEBページで先7日間の週間天気予想図が見られます。この予想天気図を見て、「天気図1・2」と同じような形(気圧配置)になる日がないか調べます。もし、「ある日」が該当していたなら、その日が「注意日」になります。3月20日現在、3月21日〜23日に風が流れ込みやすくなる気圧配置になります。日々天気予想は変化していきますので、あくまでも予想判断は各自の責任で行ってください。 Bリアルタイムに近い風向きの情報は、気象庁のアメダス(WEBページ)で分かりますので参考にしてください。

ウェザーニュース
気象庁アメダス(風)

3/28 追記

 上記の予想通り山梨県甲府市でヨウ素、セシウムが観測されました。とても残念です。
山梨県甲府市・定時降下物の測定結果で確認できます。
3/27には収束していますが、今後の風向きと、原子炉の状況いかんにより、再び甲府で観察される可能性があります。
 私見ですが、山梨県、長野県は放射性物質の影響の端にあたり、「微妙な位置」にあります。 山梨県甲府市と長野県長野市の調査結果を比べると、山梨県のほうが圧倒的に放射性物質が飛来しています。このことから八ヶ岳南麓、東麓にも放射性物質が飛来していると考えます。 今後、風向きによって、度々放射性物質が観測されるなら、心配の度合いが大きくなります。

風向き情報 3/28現在(予想天気図は刻々と変わるので予想でしかありません)

3/29の夜にやや八ヶ岳方向に風が吹くかもしれません。おそらく風速が弱いようなので 影響はないかもしれません。また4/3-4/4に「天気図1」のような気圧配置になり八ヶ岳方向に風が吹く気圧配置になっています。注意してください。

−八ヶ岳山麓と福島第一原発との位置関係−

   福島第一原発は、八ヶ岳山麓から見ると北東〜東北東の位置で、関東平野の前橋市、伊勢崎市上空を横切る形。

八ヶ岳赤岳頂上−福島第一原発 距離約286Km (御座山の少し北の方向)
山梨県北杜市大泉町−福島第一原発 距離約293Km (飯盛山より少し南の方向)
長野県諏訪郡富士見町−福島第一原発 距離約300Km (八ヶ岳横岳の方向)
長野県諏訪市−福島第一原発 距離約302Km (蓼科山の少し北の方向)
長野県佐久穂町中込−福島第一原発 距離約263Km (八風山の方向)
山梨県甲府市−福島第一原発 距離約295Km
東京駅−福島第一原発 距離約228Km
長野市−福島第一原発 距離約266Km
長野県伊那市−福島第一原発 距離約326Km
長野県松本市−福島第一原発 距離約303Km
名古屋市−福島第一原発 距離約446Km

このように、福島第一原発は東京より北にあります。感覚的に東京基点としての距離ではないので注意が必要です。

−放射線観測についての状況−

 放射線測定についての情報はWEBページにて幾つか見る事ができます。山梨県では観測地が甲府のみ。現在は1日/3回ほどの報告で、通常の2倍程度の0.1μSv/h越えた時には逐次報告があるようです。
 また、飛来する放射性物質の量は、排出側の福島第一原子力発電所の放射能の量に起因しますので、この数値が重要ですが、悲しいことに、現在発表は散発的で分かっていないのが現状です。
 個人的な見解ですが、3月19日現在で、今、福島市で観測されている「数十μSv/h」程度の放射線が八ヶ岳山麓でも観測される可能性があると思っています。

放射線測定値のデータ

山梨県甲府市
長野県
神奈川県
東京都
静岡県
茨城県
福島県
宮城県女川原発モニタリングポスト
新潟県柏崎原発モニタリングポスト
静岡県浜岡原発モニタリングポスト
全国の放射能濃度一覧
都道府県別環境放射能水準調査結果

−放射線はどの程度まで安全なのか?−

 放射線の量の単位として、「μSv/h=マイクロシーペルト」「mSv/h=ミシーペルト」などの言葉が飛び交っています。まずは単位の整理から。

1μSv/h=マイクロシーペルト は 1.000nSv/h=1.000ナノシーペルト
1mSv/h=1ミリシーペルト は 1.000μSv/h=1.000マイクロシーペルト
1nGy/h(ナノグレイ)=1nSv/h

 自然放射線は 場所にもよるが、0.05μSv/h=50nGy/h。年間 438μSv/年 程度。
一般の人が1年で受ける放射線の限度(許容値)文部科学省は 1mSv/年=1.000μSv/年
原発労働者(人間)の限度は 50mSv/年=50.000μSv/年

 放射線の恐さは言うまでもないと思いますが、テレビなどのメディアでは 「レントゲンの際に受ける量は〜だから、このくらいの量は安全だ」
「ただちに健康に影響を与える量ではない」
などと説明しますが、この言葉には疑問を持ちます。

 そもそも、放射線は微々たるものでも「100%安全」ではありません。 放射線は体内を通過する時に細胞の中のDNAを切断します。DNAは 修復能力を持ちますが、その再生の時に「間違って修復してしまう」時があり、それがやがてガン細胞へと変異する場合があるのです。
ですから、DNAを切断する放射線が多いほど、DNAの修復回数が多くなり、 間違った修復の可能性も高くなります。
 言葉を変えれば、「放射線に被爆する量が多いほどガンになる率が多くなる」ということです。上で述べた「許容値」は「安全値」ではありません。この値以下でも以上でも、「安全・危険」とは一概にいえません。
 ですから「安全・危険」は個人で判断するしかありません。インフルエンザや残留農薬と同じような状況です。手洗い、うがい、マスク、予防接種をする人もいれば、必要ないと思う人もいます。これは個人の判断です。この判断を他人がとやかく言う必要はないと思います。
  最後に3/18日に福島市で観測された放射能の値は約10μSv/hです。 一日中、外気に触れていたとすると、10μSv/h×24時間=240μSv/日、 10日で2400μSv、30日(約1ヶ月)で7200μSv、実際には一日中外にはいませんので、仮にこの値の2割程度とすると、1440μSv/月です。
文部科学省で発表されている一般の人が1年で受ける放射線の限度は 1mSv/年=1.000μSv/年
ですので、この値は一ヶ月で超えてしまいます。
子供や妊婦は放射線の影響が強いので、シビアな対応が必要かと思います。
(終り)